尾形光琳は何がすごいのか?

今回は、琳派の名前の由来となった尾形光琳はいったいなぜすごいのか!
解説してみようと思います。
尾形光琳といえば、燕子花(かきつばた)図屏風と紅白梅図屏風。
学校の日本史の図表などでは、元禄文化のページに必ずこの2種類の絵が出てきます。
燕子花図屏風
紅白梅図屏風
でもこの2つの絵はいったい何がすごいんでしょうか?
そんな疑問に今回は応えてみようと思います。
尾形光琳ってどんな人?
その前に、まずは尾形光琳という人についておさらいしておきます。
尾形光琳は万治元(1658)年生まれ。
京都の呉服商「雁金屋(かりがねや)」の当主、尾形宗謙の次男。
陶工の尾形乾山は光琳の弟で、兄弟合作の作品も多く残っています。
お父さんの尾形宗謙が死んだ後は、雁金屋は長男が継承し、光琳は分けてもらった遺産で遊びほうけます。
遺産を使い果たした40代になって、ちょうどそのころお兄さんが継いだ雁金屋も大名への金貸し業で貸し倒れが多発して倒産。
これはやばい!
となって、しかたなく画家になったと言われています。
そんな放蕩息子の作品が国宝になるなんて、なんかやるせないものも感じますね。
でも高級ブランドの呉服屋に生まれたこと、放蕩三昧の時に良い品を見る機会に恵まれたことから、絵画のほか染め物や工芸のデザインなどの知識も豊富だったと言われています。
燕子花(かきつばた)図屏風の何がすごい?
とにかく表現方法が新しい!
この絵、たくさんの燕子花(かきつばた)が描かれています。
でも、よーく見てください。
これらの燕子花(かきつばた)。
ぜんぶほとんど同じじゃないですか?
色の数も群青(ぐんじょう)と緑青(ろくしょう)のたった2色。
これは染め物で使う型紙の技法を応用しています。
江戸時代の屏風絵なのに、絵画というよりデザインの要素をふんだんに取り入れたところが新しいんです。
また左と右で、微妙に上から見た感じと横から見た感じで、分けて描かれています。
そのために背景の金色を入れてもたった3色しかないのに、どことなく立体感があるように見えるのもポイントです。
そして背景の金色!
金箔の貼り方が独特です。
普通、昔の屏風絵を見ると金箔が結構はがれていると思いますが、この絵は金箔のはがれ方も計算されています。
なんと、はがれたラインがすべて垂直になるように金箔が貼られているんだそうです。
燕子花(かきつばた)自体はデザイン的にコピペした感じで描いているくせに、背景は異常なまでの手間ひまをかけているのもこの絵の面白いところなのです。
紅白梅図屏風の何がすごいのか?
では、紅白梅図屏風はいったい何がすごいのでしょうか?
この絵、構図は明らかに風神雷神図屏風を意識しています。
どちらも左右の正方形に対角線を引いた上側にモチーフを描いていますね。
それによって、奥行き感を出しています。
唯一違うのは、紅白梅図屏風は中央に流水を描いていること。
本来、ここで中央に何か描くのは邪道なのだそうです。
でも紅梅白梅だと風神雷神に比べてパンチが効いていないので、この流水が描かれることで絵が全体的にパワフルになっています。
中央の流水は銀箔を使って描かれています。
ここでも燕子花(かきつばた)図屏風と同様に、パターン化されたデザイン表現が行われています。
と思ったら、左右の紅梅白梅。
宗達が発明した水墨画のたらしこみ技法で、ものすごく渋い老木を描いておりとても絵画的です。
そして左の白梅は上から下に描かれ、エッジの効いたシャープなイメージ。
右の紅梅は下から上に描かれ、丸みを帯びた柔らかな感じ。
鋭さと柔らかさ
デザイン的な要素と絵画的な要素
それぞれが高いレベルで入り交じっている。
これが紅梅白梅図屏風のすごいところなのです。
2015年の2月はMOA美術館で、この2つの国宝が一度に見られました。
ぜひ今後もこの2つを同じ空間で見比べてみたいものですね。
主な参考文献
古田亮『俵屋宗達ー琳派の祖の真実ー』(平凡社新書、2010年)
『日本美術全集ー宗達・光琳と桂離宮ー』13巻江戸時代Ⅱ(小学館、2013年)
平木孝志。北國新聞文化センター「茶の湯と美術談義」2014年12月20日レジュメ
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