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【歴史トーク】江戸の高度成長期「元禄時代」の世の中とは?(前編)

元禄時代とは5代将軍徳川綱吉の時代にあたり、西暦でいうと1688年〜1707年までを指します。

徳川綱吉というと、生類憐みの令がすぐに思い浮かびます。

人より犬が大切だった時代というイメージで、嫌な世の中だったという印象がありますが、実際のところはどうだったのでしょうか?

今回は元禄時代の世の中について、以下の6つの切り口から語ってみようと思います。

1、対外関係
2、社会
3、技術・環境
4、政治
5、経済
6、文化

対外関係について

まずは対外関係です。

江戸時代の初期、中国は明という国から清という国に変わります。

その後、内乱が続いていましたが、この頃ようやく終息。
東アジアはようやく平和と安定の時期を迎えます。
結果、中国商船がたくさん長崎に来航し、長崎貿易も盛んになります。

また朝鮮は、明との関係が強く清との関係が良好でないこともあって、日本と友好関係を持っておきたいという事情がありました。
結果として、豊臣秀吉の朝鮮出兵以来悪化していた日朝関係も、この頃には友好的になっていました。

社会について

社会の変化についてですが、6つのポイントがあります。


まずは大家族の解体と小家族の独立です。

戸主の弟家族や下人(奴隷)の家族の独立が進み、総中流化ともいってよい状況が生まれます。これを「小農自立」と呼びます。

*以前にこの辺りの状況について書いた記事がありますので参照ください。 
 【歴史トーク】なぜ日本人は長時間労働をしてしまうのか?

2つ目は大家族の解体とともに、村内のつながりが同族団のつながりから、組や講と呼ばれるつながりに変化します。
戦国時代以来の有力者が没落していきます。

3つ目は村役人制度の変化です。

上記2つの流れから小農民代表として「百姓代」という役職が現れたり、今の村長にあたる庄屋が世襲制から入札制に変化します。

4つ目は人口の増加です。

推定ですが、江戸時代初期に比べ少なくとも2倍になったと言われています。
関ヶ原の戦いがあった慶長5(1600)年の日本の推定人口は1,227万人ですが、100年後の享保6(1721)年は3,128万人といわれています。

5つ目は宗教の庶民化です。
これまでの宗教はどちらかというと、生きるか死ぬかの戦国時代の中で、心の平安を与えることが目的でしたが、この頃になると現世利益の信仰が活発になり、開帳イベントが活発化します。
またこの頃には、戦国時代で焼けてしまってから放置されていた奈良の東大寺大仏殿再建の動きが民間から発生するなどの動きが見られました。

6つ目は戦国の気風の風化です。

忠臣蔵で有名な赤穂事件に見られる仇討ちだったり、カブキ者(江戸時代のヤンキーのようなもの)の取締がすすみました。

技術・環境について

技術・環境のポイントは4つです。

まず堤防や河川の管理技術が発達しました。
これまでは洪水の被害を恐れて大河川の中・下流域に田畑はあまり作られていませんでした。

しかし堤防や河川工事の技術の発展で新田開発が進み、耕地面積は江戸時代初期に比べ1.5倍になります。
このイノベーションが元禄時代の人口増を支えたのです。

2つ目は新田開発が進んだことで、治水問題・境界紛争・漁業権の保障などの問題が藩の領域を超えるようになり、広域行政の必要が高まります。

そして、その広域行政を江戸幕府が担うことになります。

3つ目は新田開発と同時に山の草山・柴山化が進んだことです。

当時は草の肥料を使用していましたから、現在でも奈良の若草山で行われているように
山焼きを行って肥料の草を確保していました。
結果、大量に土砂が流出するようになり、河川の土砂をさらったり、土砂を流出させないための工事などを上記のように広域に行う必要性が生じました。

4つ目は自然災害の頻発です。
元禄地震や富士山の大爆発などが発生し、江戸幕府は災害の復興や福祉の対応も行わなくてはなりませんでした。

前編のまとめ

ここまでをまとめると、

この時期の社会は、河川工事の技術のイノベーションのおかげで、河川の中・下流域にまで新田開発を行うことが出来るようになり、耕地面積が拡大。
そのおかげもあって、これまで大家族で戸主に従属していた弟夫婦や奴隷夫婦などが独立。
頑張れば頑張るほど生活が豊かになるため、人口も江戸時代初期から比べて2倍に増加します。
しかしその副産物として、山の禿げ山化や洪水問題などの災害が量もエリアも拡大。
これまで地方のことは各藩で対応していましたが、幕府が広域的に対策を行う必要性が生まれたのです。

*中編につづく

主な参考文献

高埜利彦「18世紀前半の日本~泰平のなかの転換」(『岩波講座日本通史第13巻近世3』岩波書店、1994年)

菅原憲二「老人と子供」(『岩波講座日本通史第13巻近世3』岩波書店、1994年)
若尾政希「江戸時代前期の社会と文化」(『岩波講座日本歴史第11巻近世2』、岩波書店、2014年)

水本邦彦『草山の語る近世』(山川出版社、2003年)

大藤修『近世農民と家・村・国家』(吉川弘文館、平成8年)

杣田善雄『幕藩権力と寺院・門跡』(思文閣史学叢書、2003年)

鬼頭宏『人口から読む日本の歴史』(講談社学術文庫、2000年)

佐々木潤之介『江戸時代論』(吉川弘文館、2005年)
『週刊新発見!日本の歴史31 江戸時代4元禄の政治と赤穂事件』
(朝日新聞出版、2014年)

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