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【歴史トーク】江戸の高度成長期「元禄時代」の世の中とは?(後編)

前回の記事【歴史トーク】江戸の高度成長期「元禄時代」の世の中とは?(中編)

後編は経済と文化について述べていきます。

まず元禄時代の経済についてのポイントは5つです。

1、江戸幕府初の財政赤字
2、貨幣改鋳によるインフレ
3、初期商人の大名貸の行き詰まりと新興商人の台頭
4、大坂の海運業の発達。京都から大坂へ 
5、職種の多様化・細分化・組織化の進行

上記5点についてまず述べていきます。

江戸幕府初の財政赤字

まず最初のポイントは、この時期にはじめて江戸幕府は財政赤字となることです。
原因は収入の減少と支出の増加です。

江戸幕府には2つの収入がありました。
幕府直轄領(天領)からの年貢と銀・銅の長崎貿易での輸出です。
ですがこの時期になると、銀・銅の産出量が激減、収入が大きく減少します。
しかし広域行政の需要や福祉のための予算が膨らみ、支出は大幅に増えていたのです。

貨幣の改鋳とインフレ

そこで2つ目のポイントですが、その対応策として徳川綱吉は貨幣の改鋳を行います。
貨幣の金・銀の含有量を減らし、たくさんの貨幣をつくったのです。
これまでは金や銀の含有量で貨幣の価値を決めていましたが、含有量が減っても幕府が自身の信用でこれは同じ価値があると決めることによって、同じ価値で流通させることに成功しました。

要は現在の紙幣と同じです。
1万円札自体には紙としての価値しかありませんが、日本国が国家の信用で1万円の価値があると決めているので、1万円として使えるわけです。

これは世界的に見ても画期的な政策でした。

お金がたりないのなら、お金をたくさん造ればいいじゃない。

という当時としては斬新なアイデアで財政赤字を埋めることに成功したのです。

しかし当たり前のことですが、貨幣の流通量が増えたことでインフレが進行しました。

初期豪商の没落と新興商人の台頭

3つ目のポイントは戦国時代以来の豪商が没落し、新興商人が台頭したことです。
江戸時代初期の豪商はほぼ、大名へお金を貸す「大名貸」を行っていましたが、この返済が滞るようになり、倒産が続出しました。
かわりに三井越後屋などの新興商人が台頭するようになります。
*尾形光琳の実家だった呉服屋「雁金屋」も同様の理由でこの時期に倒産したことは以前にも述べました。
【歴史トーク】琳派400年記念。尾形光琳は何がすごいのか?

大坂の海運業の発達

そして4つ目のポイントは大坂の海運業の発達です。

これまで畿内の経済の中心は京都でした。
しかし元禄以降、経済の中心は次第に大坂に移るようになります。

職種の多様化・細分化・組織化

そして5つ目のポイントは職種の多様化・細分化・組織化です。

経済の規模が拡大していく中で、これまでは1人が様々な仕事を掛け持ちしなくては生きていけなかったのが、大工なら大工といったようにそれだけで食べていけるようになると同時に、職種ごとに組織化されるようになっていきました。

元禄文化

元禄時代の文化については、基本的に京都と大坂の上層町人が中心の文化です。

美術では、尾形光琳や本阿弥光悦、野々村仁清などが出ました。

*尾形光琳については、さきほどもあげた以下の記事を参照してください
【歴史トーク】琳派400年記念。尾形光琳は何がすごいのか?

ほか、人形浄瑠璃や歌舞伎、俳諧などが盛んになり、井原西鶴、近松門左衛門、竹本義太夫、坂田藤十郎、市川団十郎、松尾芭蕉といった人が活躍しました。

学問では儒学が発達し、湯島聖堂が設立されたり、医学・暦学・農書・和算などが普及しました。そして、それらを普及させるための手段として、商業出版が行われるようになったのもこの頃です。「仁政」概念を普及させるための太平記や農業全書などの農書の出版などがなされました。

まとめ 

元禄時代は河川工事技術のイノベーションによって、新田開発が進み、それを背景に人口が江戸時代初期に比べて2倍になるなど、空前の高度成長期でした。
しかしその結果として洪水などの災害も多発、またエリアも拡大したことから広域行政の必要性が生じたこと、また政治思想としての天道委任論を徳川綱吉は強く意識したこともあって江戸幕府は福祉国家としての大きな政府を志向しました。
結果、江戸幕府は開府依頼はじめての財政赤字を経験します。
そこで徳川綱吉は幕府の収入を増やすために貨幣の改鋳を行い、貨幣の流通量を増加させることで対応しました。
しかし、それは当然のことながらインフレーションを伴い、庶民の生活を圧迫するようになっていくのです。

主な参考文献

高埜利彦「18世紀前半の日本~泰平のなかの転換」(『岩波講座日本通史第13巻近世3』岩波書店、1994年)

菅原憲二「老人と子供」(『岩波講座日本通史第13巻近世3』岩波書店、1994年)
若尾政希「江戸時代前期の社会と文化」(『岩波講座日本歴史第11巻近世2』、岩波書店、2014年)

水本邦彦『草山の語る近世』(山川出版社、2003年)

大藤修『近世農民と家・村・国家』(吉川弘文館、平成8年)

杣田善雄『幕藩権力と寺院・門跡』(思文閣史学叢書、2003年)

鬼頭宏『人口から読む日本の歴史』(講談社学術文庫、2000年)

佐々木潤之介『江戸時代論』(吉川弘文館、2005年)
『週刊新発見!日本の歴史31 江戸時代4元禄の政治と赤穂事件』
(朝日新聞出版、2014年)

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