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田沼意次は江戸幕府をどう立て直そうとしたのか?(後編)(伊藤若冲・与謝蕪村の時代)

さて、前回の続きです。

前回の記事はこちら
【歴史トーク】田沼意次は江戸幕府をどう立て直そうとしたのか?(前編)

田沼意次の行った政策の結果、どのような成果が得られたのでしょうか?

まず民間(商人・町人)の活力がアップ、また人材の流動化が進みました。
ほか商品の流通を通じて都市と地方の交流が進みました。

そして結果として幕府の財政も再建されたのです。

また民間の活力が向上したことで、この時期は宝暦・天明文化と呼ばれる武士・上層農民中心の文化が江戸や大坂で開花しました。

宝暦・天明文化

地域的には江戸と大坂が中心でした。

絵画では、上方で与謝蕪村、池大雅、円山応挙、伊藤若冲、曾我蕭白など、江戸では鈴木春信が錦絵の技法を完成し、喜多川歌麿、東洲斎写楽、司馬江漢などが現れました。
俳諧では与謝蕪村が生まれ、川柳や狂歌も盛んになります。
小説では山東京伝、恋川春町、大田南畝、上田秋成、竹田出雲が現れ、出版社としては蔦屋重三郎が有名です。
学問の世界では、本草学の平賀源内、漢学・国学の本居宣長、蘭学の杉田玄白などが活躍しました。また全国的に藩校が設立されるようになりました。

田沼意次の政策はいいことばっかりだったのか?

田沼意次の政策はここまで見るとよいことだらけのように思いますが、もちろん問題点もありました。

まず庶民からの献策を重視したので、賄賂で献策を採用してもらうといった風潮が現れました。
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山吹色のお菓子

また、人材の流動性を重視したので、昔からの既得権を持っている層に大反発を受けます。
現代の企業で言うなら、若手を登用することで40〜50代の仕事ができない社員を降格させたようなものなので、彼らの恨みをかいました。

そして彼らによる巻き返しによって田沼は失脚してしまうのです。

そのきっかけとなったのが、田沼意次の天明の飢饉の対応の失敗です。

天明の飢饉とは?

天明の飢饉とは天明3(1783)年に発生した近世最大の飢饉で、全国で推定2万人が死去したと言われています。

この時期、太陽の活動が低下し世界的に気温が低下したと言われています。
また同年4月に岩木山、7月には浅間山が噴火し、その火山灰によって塵が成層圏まで覆うことで、低温傾向が長期化します。
また同年にはアイスランドでラキ火山やグリスヴォトン火山の噴火などがあり、その傾向は日本だけでなく世界的なものでした。

現代は世界的な温暖化が問題となっていますが、当時は世界的な気温低下が大きな問題でした。

そして気温の低下によって、とくに東北地方では米の収穫量が激減しました。

また当時は江戸などの都市部に高値で輸出するために、美味しい米を作ろうとしていましたから、美味しくないけど気温低下に強い品種より、気温低下に弱くても美味しい米を植えるようになっていたので、より被害が拡大したのです。

また財政難の東北の諸藩は、そんな状況でも年貢米を換金しなくてはならず、大坂へ米を飢餓輸出しないといけませんでした。

結果、地方では米価が高騰し、打ち壊しや百姓一揆が頻発するようになったのです。

田沼意次の政策は幕府至上主義

さきほど天明の飢饉の際、財政難の東北諸藩が飢餓輸出を行ったと書きましたが、じつは田沼意次の政策は幕府さえ良ければ藩はどうなっても良いという政策でもありました。

ですので、全国の藩が同様の政策を行う際、幕府と藩の利害がバッティングすることがありましたが、常に幕府の利害を優先したため、諸藩のうらみをかっていました。

同時期、全国の藩で同じような内容の改革が実施されますが、幕府の介入により挫折する事例は徳島藩や加賀藩などたくさん見られます。

また米価の引き上げ策として、年貢米の先物取り引きの規制を行ったので、藩は大坂商人から年貢米を担保にした融資を受けられなくなるという状況が発生したりもしていました。

まとめ

田沼意次は人材の流動化を進め、硬直した組織を崩し、新しい産業を創出することで幕府の財政再建を成し遂げました。


しかしあくまでも幕府や江戸・大坂などの直轄大都市の利益だけを重視し、地方の活性化という視点はありませんでした。

その結果、天明の飢饉の対応に失敗し、10代将軍徳川家治の死去とともに失脚することになるのです。

文責:安藤竜(アンドリュー)

主な参考文献

田家康『気候で読み解く日本の歴史』(日本経済新聞出版社、2013年)

辻善之助『田沼時代』(岩波文庫、1980年)

深谷克己『田沼意次』(山川出版社、2010年)

藤田覚『田沼意次』(ミネルヴァ書房、2007年)

藤田覚『田沼時代』(吉川弘文館、2012年)

藤田覚『近世の三大改革』(山川出版社、2002年)
佐々木潤之介『幕末社会論』(塙書房、昭和44年)
中井信彦『転換期幕藩制の研究』(塙書房、昭和46年)
高橋啓『近世藩領社会の展開』(渓水社、2000年)

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