「江戸前」は本来どこまでを指すのか?

「江戸前」の範囲について『日本国語大辞典』で意味を見てみると、
「江戸の前」の意。「前」は、にわ(漁場)の意とも。江戸湾(東京湾)近海を言う。
とあります。
最近では東京湾で採れた魚はみんな「江戸前」と言っているような気がしますが、本来の意味では江戸湾(東京湾)の近海を意味していました。
でもなんとなくは分かりますが、江戸湾(東京湾)近海といっても具体的にはどこまでを指すのでしょうか?
以下の史料を見てみましょう。
「但シ江戸前ト唱へ候場所ハ、西ノ方武州品川州崎一番ノ棒杭ト申場所、羽根田海ヨリ江戸前海へ入口ニ御座候、東ノ方武州深川州崎松棒杭ト申場所、下総海ヨリ江戸海へ入口ニ御座候、右壱番棒杭ト松棒杭ヲ見切ニ致シ、夫ヨリ内ヲ江戸前海ト古来ヨリ唱へ来リ候(下略)」
『日本橋魚市場沿革紀要』上 40丁。(吉田伸之『巨大城下町江戸の分節構造』(山川出版社、2000年)251〜252ページより引用)
「江戸前」とは、西は品川の州崎にある一番棒杭と、東の深川州崎の松棒杭の間のラインから内側を指していたことがわかります。
つまり品川と深川の間の狭いエリアの海だけが「江戸前」だったのです。
今でいうと、お台場から内側くらいのエリアだといえるかと思います。