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【歴史トーク】江戸時代のプラットフォームビジネス〜問屋と仲買の違いから〜

近年、歴史学の世界では商品流通の研究が進んでいますが、その成果はまだまだ一般の人びとには伝わっていないようです。

例えば問屋と仲買の違い。

過去のYahoo知恵袋なんかを見ていても、これはマグロの流通で例えられているのですが、

生産→漁師
問屋→漁業組合
仲買→市場
小売→スーパー

なんて回答されていたりします。

実際問題として江戸時代も後半になってくると、問屋と仲買はどちらもそれぞれの機能を持つようになったりするため非常にややこしいのですが、本来の江戸時代初期の形でいうと、

 生産→漁師
問屋→市場
 仲買→卸業者
小売→スーパー、町の魚屋

といった形の方が実態に近い形かと思います。

問屋とは何か?

まずはそもそも問屋とは何か?

ということから説明していきます。

問屋とは本来、特定の品種を上納する御用をつとめる存在のことを言いました。

江戸では「納人(おさめにん)」と呼ばれることが多かったのですが、この御用を務めるみかえりとして特定の品種の集荷をする特権を与えられていたのです。

加賀藩の魚問屋の事例でいうと、江戸時代初期の寛永年間に金沢の魚問屋6人が藩主へ魚を上納する御用を請け負うことで、加賀・越中・能登の3カ国の浦々から魚を集荷する権利を独占していたのです。

なぜ問屋を通すの?

漁師にしてみれば別にこの6人の問屋を通さなくても、直接お店に商品を卸せば良いわけです。

なのになぜ問屋なんてものを間に入れていたのか?

それは藩がそれを禁止したからです。

また、加賀藩の場合は魚の流通に税金をかけていたため、問屋は税金の徴収と納入という役目も果たしていました。

そのため確実に税金を確保するためにも、必ず漁師は問屋に商品を卸さなくてはならなかったのです。

問屋の役割

なので魚の売買を漁港で行うことは禁止され、必ず問屋庭(とんやば)と呼ばれる問屋の敷地内でせりを行うことが決まりでした。

そして漁師と仲買は取引の場所代として口銭(手数料)を支払います。

これが問屋の収入となりました。

また問屋は藩の保護だけをあてにせず自分自身も決済の代行を行うなどをして、漁師や仲買の利便を図り魚荷の集荷を促進したのです。

つまり問屋というのは本来、あくまでも場所を提供する存在で商人というよりは地主といった方がよい性格の人たちだったのです。

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現代のビジネスでいうならば、ヤフオクという場を提供するYahoo!Japanのような存在が問屋といって良いのかなと思います。

問屋とはプラットフォームビジネスを行う存在だったのです。

*プラットフォームビジネスについてはこちらをどうぞ

このような魚問屋は加賀藩の場合、より漁港に近い七尾・高岡・宮腰・小松などにそれぞれいて、国問屋と呼ばれていました。

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そして金沢市内で魚問屋が集中して住んでいた場所が、今も観光地として有名な近江町市場だったのです(寛永当時は隣町の袋町に魚市場があったと言われています)。

つまり市場というのは、現在の中央卸売市場の機能を果たしていた小規模の問屋の集合体が本来の形だったのです。

仲買の役割

では、仲買はどうだったのでしょうか?

仲買の本質は、

そんな市場で売買をしてもよい権利を持つ人

ということができます。

江戸時代の仲買は問屋の下請の場合が多かったと言われています。

江戸の日本橋魚市場の事例でいうと、問屋の店先を借りて小売の商人に卸販売を行っていました。

この売り場は板舟と呼ばれ、本来は臨時の売り場だったのですが次第に常設になっていきます。

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まさに今現在近江町市場などで見かける風景ですね。

ただ現在はこの売り場で小売も行っていますが、当時は直接近江町市場で個人が買い物を行うことはありませんでした。

ここでは天秤棒を担いだ行商人などが魚を購入し、各家庭ではこれらの行商人から魚を購入していたのです。

ヤフオクで言えば、まさに出品を行う人たちが仲買ということになるでしょう。

問屋と仲買の違い

ここまでをまとめると、問屋と仲買のルーツはかなり異なります。

ヤフオクに例えると

Yahoo!Japan → 問屋

出品者      → 仲買

ということになるわけで、まったくビジネスモデルの違う存在だったのです。

しかし江戸時代も後半になってくると、問屋がプラットフォームビジネスだけでなく実際に出品を行うようになってきたり、逆に出品者が独自のプラットフォームをつくるような動きも出てきます。

結果、問屋と仲買の違いもよく分からないものになっていくのです。

この辺りの流れについてはまた別の機会に書いていきたいと思います。

主な参考文献

富士通総研『プラットフォームビジネス最前線26 の分野を図解とデータで徹底解剖』(翔泳社、2013年)

吉田伸之「補論2寛永期、金沢の魚問屋について」(『伝統都市・江戸』東京大学出版会、2012年)

吉田伸之『成熟する江戸』(講談社学術文庫、2009年)

原直史『日本近世の地域と流通』(山川出版社、1996年)

高瀬保『加賀藩流通史の研究』(桂書房、1990年)

塚田孝『近世身分制と周縁社会』(東京大学出版会、1997年)

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