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日本の古典100本ノック! 第2回 岡倉天心著『茶の本』

歴活代表の安藤竜(アンドリュー)です。

日本の古典100本ノック!

第2回の古典は、岡倉天心『茶の本』です。

*この企画の趣旨についてはこちらを参照ください

岡倉天心といえば美術史家として有名です。とくに茶人というわけではありません。
そんな岡倉天心がなぜお茶についての本を書いたのか?
私は本書を読むまでずっと不思議でした。

序文と意訳

「茶は薬用として始まり後飲料となる。シナにおいては八世紀に高雅な遊びの一つとして詩歌の域に達した。十五世紀に至り日本はこれを高めて一種の審美的宗教、すなわち茶道にまで進めた。茶道は日常生活の俗事の中に存する美しきものを崇拝することに基づく一種の儀式であって、純粋と調和、相互愛の神秘、社会秩序のローマン主義を諄々と教えるものである。」

お茶は元々は薬だったのが後に飲み物になった。

中国では8世紀にみやびな遊びとして詩や歌のようになり、15世紀の日本では美を追求する宗教、つまり茶道にまで進化した。

茶道は日常生活のなんでもないことの中にある美をあがめる宗教儀式のようなもの。

純粋なものとそれらが調和するときの美、主人と客との愛の神秘、ロマン主義的な感性を重視する社会秩序についてくりかえし教えるものなのだ。

著者、岡倉天心とはどんな人?

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岡倉天心は福井藩の下級武士の出身です。
父が福井藩の貿易関連の仕事をしていたため、英語に堪能でした。

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東京大学卒業後、フェノロサとともに日本美術を調査、廃仏毀釈で失われかけていた日本美術の保護に努めます。
その後、東京美術学校の校長として日本画家を育成するも、スキャンダルで失脚。

その後、インド訪問やボストン美術館での勤務を通じて、西洋人に対してまだ評価の低いアジアの素晴らしさを伝える必要性を感じるようになります。

そこで書かれたのが『茶の本』です。

『茶の本』が書かれたときの時代背景

明治39(1906)年、『茶の本』はニューヨークにて出版されました。

この時期はちょうど日露戦争の1年後にあたります。

明治時代の日本は江戸幕府の時代に結んだ不平等条約の改正に躍起でした。

日本は西洋よりも劣っている半未開の国とされていたのです。

条約改正のためには西洋化すること、のちには独自の文化が存在することを国際的に説明する必要があったのです。

*このあたりの事情については、こちらの記事をどうぞ

感想

岡倉天心の『茶の本』は、新渡戸稲造『武士道』、内村鑑三『代表的日本人」とならぶ、三大明治時代の西洋人向け日本人論といって良い本です。

ちょうど、明治27(1894)年の日清戦争の年に『代表的日本人』が出版され、明治33(1900)年に『武士道』が出版されました。

『代表的日本人』は、こんなすごい人が日本にいたんだぞ!ということを西洋に伝えました。

そして『武士道』は西洋の騎士道に対して日本には『武士道』があるということを伝えました。

そして明治37年に起こった日露戦争の後、『茶の本』は書かれました。

本書は明らかに『武士道』を意識して書かれています。

日清日露の戦いで勝利し、西洋社会の中で立場を強くした日本。

しかし美術史家の岡倉天心にとって、日本が戦争の強さ=武士道だけで評価されるのは納得がいきませんでした。

日本人の美を愛する精神の高さこそ評価されるべきものであると岡倉天心は考えました。

だからこそ、わざわざ専門ではない茶道についての本を岡倉天心は書いたのです。

日本の戦国時代。

キラ星のごとき戦国大名が群雄割拠していた時代。

天下布武を掲げた織田信長は「武」の力で天下統一を目指しました。

そんな時代に千利休という不世出の茶人は茶の湯という「美」の力を天下にしらしめました。

戦国の世にあえて、新たな美の創出が行われたことこそ、岡倉天心が言いたかった日本人の凄さだったのではないかと思うのです。

*以前、この『茶の本』から学ぶ読書会を開催しました。その時の様子はこちら

参考文献

岡倉覚蔵『茶の本』(岩波文庫、1929年)

岡倉天心著・夏川賀央現代日本語訳『茶の本 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ)』(致知出版社、2014年)

小路田 泰直『邪馬台国と日本人』(平凡社新書、2001年)

佐藤道信『〈日本美術〉誕生』 (講談社選書メチエ、1996年)

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