1. HOME
  2. ブログ
  3. 日本の古典100本ノック! 第3回 福住正兄著『二宮翁夜話』(二宮尊徳語録)

日本の古典100本ノック! 第3回 福住正兄著『二宮翁夜話』(二宮尊徳語録)

歴活代表の安藤竜(アンドリュー)です。

日本の古典100本ノック!

第3回の古典は、福住正兄著『二宮翁夜話』です。

*この企画の趣旨についてはこちらを参照ください

13769543_1066864566731247_8636112996648178495_n

二宮尊徳といえば、小学校にある薪を背負った金次郎少年の銅像をまっさきに思い出します。
貧困にあえぎつつも、親孝行でまじめに一所懸命働きながら勉強をする少年だ。

しかし二宮尊徳という人は大人になってからの方がすごい。
地に足つけた実践派の経営再建コンサルタント。それが私にとっての二宮尊徳像。

そんな二宮尊徳の教えは、今こそ役に立つのではないかと思うのです。

序文と意訳

一、翁いわく、それ誠の道は、学ばずしておのづから知り、習わずしておのづから覚え、書籍もなく記録もなく、師匠もなく、しこうして人々自得して忘れず、これぞ誠の道の本体なる、渇して飲み、飢えて食らい、労(つか)れていねさめて起く、皆この類なり

  *一部筆者が書き下し文に直した。

二宮尊徳翁はおっしゃった。
誠の道は、学ぼうとしなくても自然と知ることができ、誰かから習わなくても自然と覚え、本も記録も師匠もなく、なのに人々は勝手にマスターして忘れない。
これが誠の道の本質である。

のどが渇けば飲み、お腹がすけば食べ、疲れたら寝て起きる。これと同じだ。

二宮尊徳の生きた時代背景

Mizuno_Tadakuni

二宮尊徳が活躍した時代は江戸時代の後半、老中水野忠邦が天保改革を行っていた頃。

20100531145553b49

時代劇でいうなら遠山の金さんの頃になります。

農民の誰もが土地を持ち、一所懸命米を作っていれば幸せに暮らせた時代は終わりをつげ、商品経済の発展に伴う格差社会が到来した時期です。

一部の豪農と呼ばれる人々が土地を買い集めて地方経済を牛耳る一方、税金が払えず土地を売却し日雇い労働者となる人々が増加しました。

そこに貨幣改鋳によるインフレや天保の飢饉もあって、農村の貧困問題が拡大。

百姓一揆が全国的に多発する上、自分の土地を失った人々は勤労意欲を失って農村の田畑は荒れ放題。
結果として江戸幕府や藩の税収も激減。

なんとかしなければと、江戸幕府が農村復興政策をとったのが天保改革なのです。

二宮尊徳と著者・福住正兄とはどんな人?

Ninomiya-Sontoku
そんなまるで現代に通じるような状況だった江戸時代後期、二宮尊徳は天明7(1787)年に百姓の子として生まれました。

没落した自分の家を再興してからは、武士の家計を再建、下野国(栃木県)桜町領の復興などの成果を上げ、小田原藩や幕府に仕えることになります。

そのスタイルは徹底的に農民の立場に立って、実践を積み重ねるというもの。

そのベースは「分度」「推譲」

支出をとにかく収入より少なくすることで家計をプラスにする「分度」

余ったお金を使って貸付などの投資を行う「推譲」

この2つでした。

ご立派な理論をあてはめるのではなく、支出を減らし収入を増やすにはどうするか?

このシンプルな課題を徹底的に現場で実践することで荒廃した農村を立て直しました。
二宮尊徳は実践を重視するがゆえに、自分自身はとくに書物を残すことはありませんでした。

そのため、弟子だった福住正兄が聞き書きしていた二宮尊徳の教訓を書き残したのが本書なのです。

感想

この序文は二宮尊徳の思想を一番表現しているように思うのです。

企業で業務改善を行う際、もっとも注意する点は業務のどこで停滞しているのかを把握することです。
そして5つのWhyなどのフレームワークを使って問題の根本的要因を見つけ、業務の流れを整流化していきます。

まさにこの序文はそのことを言っているんだろうと思うのです。

難しく考える必要はない。
川が自然と流れるようにするにはどうすれば良いのかみんなで考えよう!

それが二宮尊徳の教えでもっとも大切なことなんじゃないかと私は考えているのです。

主な参考文献

奈良本辰也・中井信彦校注『日本思想体系52 二宮尊徳・大原幽学』(岩波書店、1973年)

児玉幸多責任編集『日本の名著26 二宮尊徳』(中央公論社、昭和45年)

早田旅人『報徳仕法と近世社会』(東京堂出版、2014年)

大藤修『二宮尊徳』(吉川弘文館、2015年)

宇津木三郎『二宮尊徳とその弟子たち』(夢工房、2002年)

関連記事