1. HOME
  2. ブログ
  3. 【歴史トーク】江戸の特産品流通〜薩摩藩と砂糖貿易〜

【歴史トーク】江戸の特産品流通〜薩摩藩と砂糖貿易〜

歴活代表の安藤竜(アンドリュー)です。

最近の地方創生ブームでは、特産品の開発というのがポイントのようです。

いわゆる「六次産業化」というやつですね。

農業や水産業などの一次産業の担い手が、二次産業である加工を行い、流通・販売などの三次産業まで行うことで素材に付加価値をつけて高値で販売することで地方を活性化させようという取り組みです。

しかし、ここ数年は成功する事例の陰で苦戦する例も多い様です。

木下斉「特産品で地方創生ができるという『幻想』」

このような状況の地方の特産品開発ですが、じつは江戸時代の後半も同様に特産品開発ブームが起きた時代でした。

以前に加賀藩の塩や松江藩のたたら製鉄・ろうそく・朝鮮人参の事例について書いたことがありますが、今回は薩摩藩の事例を紹介します。

【歴史トーク】まれの舞台!加賀藩奥能登の揚げ浜式製塩と塩専売制とは?(前編)
【歴史トーク】松平不昧に学ぶ文化都市・松江の作り方(後編)

日本への砂糖の輸入

砂糖の輸入は元亀2(1571)年の
長崎開港以来本格化したと言われています。


このとき初めて白砂糖が日本に伝わり、毎年150kgの砂糖(黒・白)が輸入されました。
当初は船のバランスを取るためのバラストとして使用されましたが、江戸時代初期の17世紀前半には重要商品となります。

長崎からは大坂の薬種問屋まで運ばれ、大坂から全国へ流通しました。
薬種問屋が扱っていたのは、砂糖が薬として食べられていた頃の名残でした。

砂糖の国産化は江戸時代

慶長5(1610)年、奄美大島の直川智(すなおかわち)が中国の福建省に漂着し、そこから黒砂糖の製法を持ち帰ったのが始まりです。

また元禄3(1690)年、奄美大島の代官が琉球から最新のサトウキビ圧搾機を使った砂糖の製法とサトウキビの苗を持ち帰り砂糖生産が本格化します。

吉宗の時代に江戸幕府としても実験的に栽培開始。
関東では普及しなかったものの、長府藩や高松藩などで砂糖の製造に成功することになります。

砂糖と琉球・薩摩藩

17世紀の中頃、琉球では、砂糖の貢納制度が始まります。

薩摩藩に多額の借金を背負った琉球政府が財政危機を脱出するために砂糖の専売制度を始めました。
正保4(1647)年から税収の一部を砂糖で支払わせて、その利益を借金の返済にあてたのです。
寛文2(1662)年には琉球政府は「砂糖奉行」を置いて砂糖を増産。
さらに翌年には白砂糖・氷砂糖の製法を学ばせるため、中国福建省に担当者を派遣しました。

琉球の砂糖は薩摩藩にとって貴重な収入源となりましたが、中国からの輸入が増加し砂糖の値崩れが発生するようになり、元禄10(1697)年には琉球における砂糖生産の制限を行うと同時に、直轄地である奄美大島での砂糖生産が進められました。

水田をあまり作れない奄美大島にとって、サツマイモとの間作が可能で畑地で簡単に栽培できるサトウキビは非常にありがたい作物でした。

薩摩藩の天保改革

18世紀後半、薩摩藩は財政危機を迎えていました。
上方の商人からの借金や木曽川改修工事などが原因です。

そこで、財政赤字の解消のために天保2(1831)年、薩摩藩は琉球に年貢米2800石分を砂糖で支払うことを命じます。

また、奄美大島・徳之島・喜界島では砂糖の増産と砂糖の専売制度を始めます。

・農民に一定額の砂糖生産を割り当てて、強制的に買い上げる「定式買入糖」。
・臨時に増額される「買重糖」

の2種類の方式で生産を強制的に拡大し、増産を成し遂げた農民には郷士格などの格式が与えられました。

また、幕末になると島津斉彬によって西洋式の製糖技術が導入され、イギリス人技術者を雇用しての白砂糖の製造が、慶応元(1865)年に奄美大島で進められました。

結果としては3年後、台風の影響で設備が崩れて目論見は崩れてしまうのですが、積極的な増産が江戸時代を通じて行われたのです。

薩摩藩の砂糖の流通

薩摩藩の砂糖は大坂の薬種問屋を通さず、直接薩摩藩の大坂蔵屋敷で入札が行われ、仲買に販売されました。

中間に入る業者を減らし直売することによって、利益を拡大しました。

img_4189

大坂への販売ルートでは阿波(徳島県)の商人が間に入り、藍の取引とリンクしながら砂糖が販売されたほか、日本海では敦賀や能登の商人との取引もあったことがわかっています。

また、下関での長州藩との貿易を行ったほか、長崎のグラバー商会と組んでの上海貿易や台湾進出を企むなど積極的な貿易の拡大が行われました。

このような販路拡大の取り組みによって財政赤字を解消した薩摩藩は、幕末の中央政治に積極的に絡んでいくことになるのです。

主な参考文献

真栄平房昭「砂糖をめぐる生産・流通・貿易史ー幕藩制市場と琉球の視点からー」(斎藤善之編『新しい近世史③市場と民間社会』新人物往来社、1996年)

関連記事