歴史学は「結果」より「過程」を大事にする学問 <歴史学の疑問解決講座> その二

どうも歴史学の疑問解決講座のお時間です。
お届けするのは例によって歴史家の安藤竜(アンドリュー)です。
テーマは
歴史学って結局なんの役にたつの?
です。
結構泣きそうなテーマですが、悲しいことによく言われることなので、やはり私なりの答えをお伝えしてみたいと思います。
そもそも歴史学って何を研究しているの?
ということにもつながるのですが、私の考えでは「ものごとの過程」を研究する学問だと思っています。
そこが「なんか役にたつの?」という疑問が出てくる原因だと思うのです。
つまり、仕事だと「結果がすべて」とよく言われます。
そこに対して、「過程も大事ですよ」と主張するのが歴史学です。
結構、歴史学って歴史的にみても世の中が停滞しているときに流行する傾向にあるのですが、まさに「頑張っても結果が出ない」時代に愛される学問が歴史学なのです。
最近ビジネス雑誌などでよく歴史がとりあげられるようになりましたが、それは必然なのです。
ちなみに歴史研究者は「結果」も大事だけど「過程」も見てあげようよ!
と主張する人たちなので、どちらかというと弱者の味方になりやすいですね。
だから左側の思想を持つ人が多いです。
「過程を研究」するってどういうこと?
では「過程を研究」とはどういうことでしょうか。
歴史学は時間軸の変化を見る学問です。
ですので、その基本形は、
(なにか良くない状態)→(誰かがこんなことをした)→(結果、こう変化したor変化しなかった)→(良くなったor悪くなった)
という形です。
過去の様々なケーススタディ・PDCAサイクルを集めているイメージですね。
これが歴史学です。
そして、歴史家によって様々な意見の違いが出るのは、結果が変化した一番の要因は何か?の解釈が異なるからです。
ダイエットに成功するにはどうしたらいい?
というテーマだったとして、たいていの人はひとつのダイエットしかしてないということはありません。
食事制限、運動、メンタルの強化、ダイエット計画の作成、ライザップに行くなどなど、さまざまな方法があります。
そして、ダイエットに失敗した場合はなぜできなかったのか?どんな要因を取り除けばできただろうか?そんなことを考えるのが歴史学です。
「食べなきゃ痩せるでしょ」
の一言で痩せられるような人や、頭を使わず体さえ使えば結果が出るような景気のよいバブルの時代には、確かに歴史学は必要のないものです。
しかし、人々が何をしたら成功できるのかわからなくなっているとき、まさに歴史学は過去の様々なケーススタディの蓄積によってヒントをくれるはずです。それが私にとっての歴史学が「役にたつ」ということです。
郷土史と歴史学(地方史)は似て非なるもの
ちなみに「金沢はこんな町だったんだよ!」とかを調べるのは、本来の歴史学(地方史)の目的ではありません。
それは「郷土史」という別ジャンルになります。
歴史学(地方史)も「金沢はこんな町だったんだよ」ということは調べますが、それはあくまで地域の情報がわからないと正確なケーススタディにならないので、金沢はこんな町だったということも調べるというだけのことです。
それが結果的に「観光」とか「地域起こし」などに利用できるのかもしれませんが、本来的な「役にたつ」ということではないのかなと思っています。あくまでも副産物です。
音楽とは何か?を研究している研究者が、ヴィジュアル系バンドをテーマに研究をしていたとして、化粧に詳しくなったようなものです。
以前、「学芸員が地域の観光に有効な仕事をしない」というようなことを言った大臣がいて、結構学芸員側の反発がありましたが、これは学芸員は本来「歴史学」を学んだ人たちばかりで「郷土史」をやっている訳ではないという思いがどこかにあるからなんだと私は思います。
L’Arc-en-Cielに音楽じゃなく、ひたすら化粧法を聞いているようなものです。音楽の事も少しは聞いてくれよ!
あれは、そんな叫びなのです。
文責:安藤竜(アンドリュー)
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