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日本の古典100本ノック! 第1回 鴨長明『方丈記』

歴活代表の安藤竜(アンドリュー)です。

新企画の日本の古典100本ノック!

第1回の古典は、鴨長明『方丈記』です。

*この企画の趣旨についてはこちらを参照ください

序文の美しさということで、まっさきに思いついたのがこの古典。

高校の古典の授業などで1回は読んだこともあるのではないでしょうか?

序文と意訳

「行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。

 世の中にある人と栖(すみか)と、またかくの如し」

川は絶えることなく流れ続ける。しかも、その水は常に新しい。

流れがよどんでいるところには泡が浮かんでいる。
その泡も消えたり、くっついて大きくなったりして、ずっと同じ姿でいることはない。

世の中の人や建物も同じだ。

『方丈記』が書かれたときの時代背景

p5-1
*源頼朝像

『方丈記』は建暦2(1212)年に書かれました。
この時期はちょうど鎌倉時代の初期にあたります。

激動の時代でした。

平和な時期が390年も続いた平安時代が終わり、武士が政権をとった鎌倉時代。

京都の貴族中心の平安時代が終わりを告げ、地方の身分の低い武士が力をつけ実力で政権を勝ち取ったのです。
京都の貴族中心の政権と鎌倉の武士中心の政権が両立していた時代です。

現代に例えるなら、東京の大企業やベンチャーが華やかに活動し、地方から利益を吸い上げていた時代から、地方のマイルドヤンキーと彼らを束ねるヤンキーの虎たちが脚光をあびる時代に変わった時期と言ってもよいでしょうか。

この大きな時代の変化にうまく乗れた人、乗れなかった人とで大きな違いが生まれた時代でもありました。
こんな不安定な時代に心を病む人々のため、親鸞や日蓮など多くの宗教者が活躍。

浄土真宗や日蓮宗などの著名な宗派はこの時期に誕生し現代につながるのです。

著者、鴨長明とはどんな人?

Kamo_no_Chomei
*鴨長明像

鴨長明は神主の息子でした。

京都の下鴨神社のトップ(禰宜)の家の次男として生まれました。

いいとこのおぼっちゃんです。

しかし、お父さんが若くして病気で亡くなってしまい、鴨長明の苦難の時代が始まることになります。

母方の家を継ぐも結局絶縁。
いいとこのおぼっちゃんから一転、困窮生活となります。

その後、大火事・台風・飢饉・地震などの大災害に加え、平清盛が行った京都から神戸への遷都で京都が一気に寂れるなどといった事件を経験。
また神主としての就職活動も競争相手に敗北。

世をはかなんで出家し、書き記したのが『方丈記』なのです。

感想

鴨長明の晩年は、東京の会社で出世競争に敗れ、東京で消耗してしまったサラリーマンが、田舎にひきこもったようなものだったのでしょう。

変化の激しい激動の時代。

変化にうまく対応し成功した人の影には、鴨長明のような変化に対応できなかった人が大勢いたのです。
時代の敗者となった(と自分自身は感じていた)鴨長明は出家の道を選び、お金を使わない何も持たない幸せを追求します。

ときに物欲に負けそうになったり、

何も持たない幸せを追求するなら、この狭い住居に愛着を持つことすらおかしくない?

なんて思い悩みながら・・・

主な参考文献


安良岡康作全訳注『方丈記』(講談社学術文庫、1980年)

五味文彦『鎌倉と京』(講談社学術文庫、2014年)

藤野秀人『ヤンキーの虎』(東洋経済新報社、2016年)

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